デザイナーの皆さん、文字の単位は何を使っていますか?
大体のグラフィックデザイナーの皆さんは、「ポイント」ではないでしょうか。
今回は、グラフィックデザイナーでこの先も活動して行くんだ!という人は、「級」を使った方が圧倒的に便利で、日常的に文字に対するスキルアップができるという話です。
あとで詳しくは、解説しますが、ザクっというと、
- 級(Q) 日本独自の活字単位でメートル法を元にしている
- ポイント(pt) 欧米での活字サイズでインチを元にしている
というような級・ポイントの違いがあります。
ちなみに、僕はグラフィックデザイナー歴20年ですが、スタート時から「級」を使っています。もちろん「ポイント」への理解もありますが「級」一択です。
インターン学生が来た際にも「級」で理解していった方が良いと言い切っています。
それだけ、グラフィックデザインにおいて文字を極めて行くのであれば、単位は級にした方が有利です。
仮に、「ポイント(pt)、級(Q)どちらを使った方が良いでしょうか?」という質問だあったとすると、
「級」以外の選択肢はありません。
普段の生活で、何インチとか使いますか??
使わないですよね?
日本で生活しているとミリ、メートルが基本です。
紙のサイズもそうです。A4であればW210×H297mm、B4であればW257×H364mmだし、名刺サイズも55×91mmと決まっています。
なのに、なぜか文字の単位になると「ポイント(pt)」(インチ法)・・・?
日本の文字組を極めるならミリ換算ができる、「級(Q)」を使うのがどう考えても合理的です。
記事の目次
- グラフィックデザイナーは級(Q)で文字組を極めることがオススメ
- 日本伝統の美しい文字組は、級(Q)を元に考えられている
- 僕がポイント(pt)を使っていない理由
- まとめ:文字を極めたいなら級(Q)の目線で日常を過ごすことがコツ!
記事の執筆者
デザイナー歴20年、20〜30歳までデザイン・印刷業の3社を経験。31歳で個人事業主デザイナーとして独立、その後、法人成り。少数精鋭の3名でのデザイン会社を経営中。都内でなくてもデザイナー独立は成り立ちます。
動画でも大まかにまとめてあります。視聴すると記事の理解が深まるのでオススメです↓
グラフィックデザイナーは級(Q)で文字組を極めることがオススメ
そもそも級(Q)とは?
写植(写真植字)時代に作られた、日本の単位です。日本独自の活字単位でメートル法を元にしています。組版をする上でミリ換算ができた方が圧倒的に便利だったわけです。
そして、歯(H)は、字間や行間を表す単位です。
最大のメリットは、
1級=0.25mm
4級=1mm
8級=2mm
12級=3mm
16級=4mm
20級=5mm
24級=6mm
というように[級数÷4]でミリ換算ができます。
逆に、参考にしたい文字の大きさを定規で測って[×4]をすれば、その文字の級数がすぐに割り出せます。
ちなみに級(Q)とは、1mmの1/4だから、
Quarter(クオーター)の頭文字を取ってQになっています。
文字組をする時で例えると、
16級(Q)の文字に対して、いくつかの行間を設定した図がこちらです↓
こんな感じで、文字の大きさ・行間も全てミリで計算できます。
文字組をしていく上で、圧倒的に便利だというのが何となくわかるでしょうか?
なぜ級数をそんなにオススメしているかというと、
世の中にあるあらゆる広告物だったり書籍だったりの文字の大きさが、定規一本であっという間に級数換算できるのです。
例えば、街中にある看板に使われている文字。30センチ(300mm)くらいだと思えば、[300mm×4=1200級]という感じで、
普段の感覚値として1000級を超える文字までを頭にインプットしておけます。
グラフィックデザイナーの感覚としては、普段やっている案件にもよるかと思いますが、
紙をメインにデザインしている人であれば、ポイントでいえば大きな文字で30〜50ポイントくらいまでが感覚値としてわかる限界ではないでしょうか。
その程度までしかわかっていないのは、デザイナーをやっている上ですごく損をしています。
僕であれば、世の中のあらゆる文字がどの大きさがある程度はわかります。
それは級を使っているからに他なりません。
常に何mmの文字だから何級という思考で過ごしているからです。
この繰り返しが、数年、数十年経ったときに面白いくらいに世の中の文字がわかる現象へと繋がります。
こんなメリットがあります!
- 日本語のタイポフェイスに最適化された文字単位である
- 定規一つで文字の大きさを知ることができるので、デザイナー初心者には特にオススメ
- 日本人が美しいと感じる書籍は級(Q)が前提になっている
デメリットはこちら
- 使っている人が少ないというのがデメリットでしょう。会社に入ったら、先輩や上司はポイント(pt)派でしょう。なので、ひとりだけ級(Q)を使っていると、会話も成り立ちませんし、指示も的確にもらうことができない恐れがあります。もしかしたら、強制的にポイント(pt)にしろと言われる可能性もあります。
日本伝統の美しい文字組みは、級(Q)を元に考えられている
僕は小説などが大好きなので、かなりの量を読んでいます。
どの出版社のものを見ても、文字組はバチバチに日本語に適した組み方をしてあります。
約物(句読点など)が全角で組んであり、
行間も2分アキ、2分4分アキ、全角アキなど、キリの良い数字が使われているので、
文字組みを見ていて非常に美しいし、読みやすいです。
ちなみに、
2分アキとは全角の1文字に対して、50%のアキ、2分4分アキは75%です。
4分アキは25%です。キャプションなどのアキはこの程度で使うときもあります。
写植時代からの日本語の組みには一定のルールがあるから美しいのです。
決まりがある中で昔から作られてきているものなので、
日本にある小説だったりの大半が読みやすいんです。
読む小説によって、文字サイズがバラバラだったり、
行間が見慣れないものだったりしたら、気持ち悪いでしょう。
つまり、日本人に昔から寄り添ってきた文字組こそが、本能的に美しく見えるのです。
この美しい文字組ができるのが級(Q)です。
書物の大きさ(ミリ)に対して、文字もミリ換算ができるから、綺麗な組みがキマります。
下手な雑誌などは、文字組がグチャグチャで見ていて気持ち悪いものも多いです。
これは、文字組を知らない人が作ってくるからです。
日本語で文字を極めるのであれば、級(Q)を使うのがオススメです。
文字組版の基本知識が知りたいデザイナーはこちらの本がオススメです。
まずは低価格な本から勉強してみれば良いと思います。印刷物の「読みやすさ」「美しさ」を追求するための基礎知識をたった550円で学ぶことができます。組版とフォントについての知識が深めて、読みやすく美しい組版のエキスパートを目指しましょう。この一冊で、今までの文字組の概念が変わり、文字に対する考え方が変わると思います。
僕がポイント(pt)を使っていない理由
ポイントの説明もしておきましょう。
ポイント(pt)とは?
欧米での活字サイズでインチを元にして作れれた単位です。DTPのソフトでは「1インチ÷72」として計算します。1インチは25.4mmなので25.4÷72の計算で、1ポイント0.3527777・・・mmとなります。国によって、若干違います。現在のデザインの主流アプリケーションであるAdobe自体がアメリカの企業なので、Illustrator、InDesignの文字設定のスタンダードはポイントになっています。
ほとんどの人は、学生のグラフィックデザイン勉強のスタート時から当たり前のようにポイントを使っていると思います。
教える先生が「ポイント」を使っているので、そうなるのは当たり前ですね。
就職して会社に入っても、先輩や上司も大抵は「ポイント」を使っているでしょう。
だから、何も考えずポイントを使っていた。という人がほとんどでしょう。
ただ、ポイントは欧米から渡ってきた単位です。
英語を元に考えられた単位なのです。
ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTU・・・と並べましたが、
アルファベットはタイポフェイスが文字によってかなり違うのがわかりますか?
例えば IとW
Iは細く、Wはワイドがかなりあります。
欧米のアルファベットと日本語では文字のタイポフェイスがそもそも違います。
ですから、文字をブロックで組むという概念がないのです。
これこそが、ポイントと日本語の相性がイマイチ悪い正体ですね。
ポイント(pt)を使わない理由
- インチの単位を日常で使わない、メートル法主体の日本には不向き
- タイポフェイスが揃っていないアルファベット前提の単位なので、日本の文字組用の単位ではない
- ミリ計算ができないので、初心者は文字の学びが難しい
ポイント(pt)が多数派ということも事実
もちろん、ポイント(pt)を否定している訳ではありません。
上にも書いたように世の中のデザイナーの大半はポイント派でしょう。
やはり、多数派がポイントである以上は、転職先の会社であったりで誰も知らない級(Q)を使っているのはリスクにもなります。
まとめ:文字を極めたいなら級(Q)の目線で日常を過ごすことがコツ!
いかがでしたか?
今回は、グラフィックデザイナーの3種の武器の一つとも言える「文字」の単位に切り込んで見ました。
級派、ポイント派いると思います。
僕は級を長年使ってきた上で、やはり日本語でデザインするのであれば級が最適だと思います。
もちろん、ポイントを否定もしませんし、僕はポイントも使えます。
自分の経験をもとに級をオススメしているだけです。
日常的に文字をミリ換算したり、ミリを文字換算したりをしていると、
世の中の文字が面白いくらいに、具体的な大きさで認識できるようになってきます。
グラフィックデザイナーとして生きていく上で、
これはかなり大きなアドバンテージです!
初心者デザイナーほど、文字の大きさと感覚がズレています。
定規片手に、世の中にある文字を計りながら文字を少しずつ極めていく!
オススメの勉強法です。
では、グラフィックデザイナーの皆さん。
文字を極めるために共に頑張りましょう!